私たちがカンボジアに治療院を開いたのは、 ビジネスとしての“海外進出”ではなく、一つの「ご縁」から始まりました。
ある日、当院に通ってくださっていた患者様が、 カンボジアで「オミダス」という送り出し機関、 つまり日本で働きたい若者たちを支援する日本語学校を運営されている方でした。
その方から、現地の学生たちが 「いつか日本で働きたい」「日本の文化を学びたい」と 日々まっすぐに努力している姿を伺いました。
その話を聞いたとき、私は心から感じたのです。 「カンボジアの人たちは、本当に素直で、真面目で、 そして何より“人として魅力的”だ」と。
その想いを確かめたいと思い、実際に現地を訪れることにしました。
現地を訪れると、その印象は確信に変わりました。 街で出会う人たちはみんな笑顔で、 困っている人を見かけると、自然に手を差し伸べてくれる。 そして、学ぶことに対して驚くほど前向きなんです。
実際、前田も「オミダス」で介護動作研修を行い、 現地の若者たちが熱心に学ぶ姿に感銘を受けました。
「この国には、きっかけさえあれば大きく成長できる力がある」そう強く感じた瞬間でした。
日本には、長い歴史の中で培われた 鍼灸・整体・リハビリなど、世界に誇れる医療技術があります。 一方で、カンボジアでは、痛みや不調を抱えていても 十分な治療やリハビリを受けられない方がまだ多くいます。
だからこそ、私たちの持つ知識や技術を 少しでも現地の人々のために活かしたい。 “痛みを取る”だけでなく、“健康を育てる文化”を根づかせたい。 そんな想いから、この国での活動が始まりました。
海外で事業を行う上で一番大切なのは、 「その国を心から好きになれるかどうか」だと思っています。
文化も、習慣も、考え方も違う中で、 相手を理解し、信頼関係を築くには時間がかかります。 けれども、現地の人々や文化・歴史に興味を持ち、 自分の足で歩き、話し、感じる。 そうして初めて、その国と“本当の意味で関わる覚悟”が生まれるのだと思います。


そして今、私たちにはもう一つ大きな目標があります。
それは──カンボジアに「鍼灸の学校」をつくることです。
治療を提供するだけでなく、 現地の若者たちが“治療する側”に立てるように、 教育の場を整えていきたいと考えています。
技術を伝えるだけではなく、 「人を育てる」ことこそが本当の国際貢献だと信じています。
いつの日か、カンボジアで育った治療家たちが、 自国の人々の健康を守り、地域を支える── そんな未来を、私たちは本気で目指しています。
それには「5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)」や、仕事に対する向き合い方も欠かせません。
日本の現場では、どんなに小さな行動にも“心のあり方”が反映されます。
道具を丁寧に扱う、時間を守る、仲間に感謝を伝える──
そうした日々の積み重ねが、最終的に患者さまへの信頼につながるのです。
私たちは、鍼灸やリハビリの技術を教えるだけでなく、
「働くことの意味」や「誠実さ・思いやり」といった、人としての基礎を伝えたいと考えています。
それは、単なるスキル教育ではなく、
日本が長年大切にしてきた“現場の文化”を共有し、
カンボジアの若者たちが自らの誇りをもって医療に携われるようにすることです。
清潔な治療環境を保ち、仲間を尊重し、目の前の人を大切にする。
そうした基本を徹底することが、世界に通じるプロフェッショナルを育てる第一歩だと信じています。
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